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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)40号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山中伊佐男の上告理由について。

論旨は、債務不履行による農地売買契約解除の場合に都道府県知事の許可を要しないとした原判決は、農地法三条の解釈を誤つた違法がある、と主張する。

しかし、農地法三条は、農地その他について新たに所有権又は使用権を取得せんとする者に、所有権又は使用権を取得せしめることが、同法一条の目的に適合するかどうかの判定を都道府県知事或は農業委員会に委ねた規定と解されるところ、売買契約の解除は、その取消の場合と同様に、初めから売買のなかつた状態に戻すだけのことであつて、新たに所有権を取得せしめるわけのものではないから、農地法三条の関するところではないというべきである。解除の対象となつた売買についてすでに県知事の許可があつたからとて、解除をなしえない理なく、またその結果該所有権がいわゆる不在地主に復帰することになつても、国による買収の対象となることのあるのは別論として、そのために右の解除が許されないと解すべきいわれはない(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、集一四巻一号九六頁参照)。されば、原判決に所論の違法は存しない。

よつて、民訴四〇一条、九五条,八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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